商人と奴隷

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「んじゃ…ま、 君は奴隷、僕は主。 その関係を、きっちり叩き込むことから始めようかね」 やはり…来た…。 拷問の時間だ。 覚悟はしていたが、この時間だけは、長年奴隷として生きてきた自分でも耐えられない。 人によってやることは違うが 自分が命からがら逃げ出してきた前の主は、 火でドーマンの毛を燃やしていくという あまりにも耐えがたい拷問を行ってきた。 もちろん、叫び声をあげたり 泣こうものならただじゃすまない。 主のイライラの矛先としてのみ その時自分は存在しているからだ。 「じゃ、まず裸になれ」 「はい…」 今着ているのも あまりにもぼろぼろなので 裸と大差は無いのだが… 言われたとおり、その場で衣服を脱ぎ 床を汚さないようにしっかりと手で持った。 「いや、その服は捨てていいよ。 さすがにその汚い服でこの家を歩かれたくない」 すると、横から召使のような男が 自分に手を差し出してきた。 その手の服をよこせということだろうか。 「あ…いえ、自分で…捨てます」 こんな汚いものを、自分よりも身分が高い人に渡すわけにはいかない。 いつどこでどんな理由で誰に殴られるのか分からないのだから 万一にも迷惑を回りにかけるようなことは絶対にしてはいけなかった。
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