商人と奴隷

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「…うん。」 ハマ様はそれだけ言うと 食べ終わった食器の片づけを始めた。 そこで、自分は全く食事が進んでいなかったことに気づく。 「…食べ終わったら、自分の部屋に戻ると良い。 明日から、“君”にいくつか仕事を任せようと思ってる。 拷問だって、継続する。 早いうちに寝て、体力をつけておけよ」 そう言い、ハマ様は自分の部屋に戻っていった。 所々矛盾のある言葉だったが、これまでに感じたことの無い温かみを感じた。 家族というものを、生まれてこの方持ったことは無いが もし、いたとしたら…こんな…感じなのだろうか? いや、馬鹿なことは考えるもんじゃない…と、自分を戒め、 早々と自分も食事を終え 言葉に甘えて早めに床につくことにした。 一度行ったということもあり 迷うことなく自分の部屋にたどり着く。 ベッドはふかふかで、寝転がってみると、 むしろかえって眠れないほどの気持ちよさだった。 どうして自分がこのような待遇を受けているのだろうか。 …いつの間にか自然に受け入れそうになっていたが よく改めて考えてみたら、本当に大変に大変なことである。 何度も言うように今までの僕とハマ様の状況は、“奴隷と主の関係”ではないからだ。 そして、ドーマンという種族は どうあっても奴隷以外の何の地位にも立てないという事も、この世界では一般常識だ。 .......今日1日で起きたことが、あまりにも多すぎて そろそろ整理しきれなくなってきているのも確かである。 なので今日は、もう何も考えずに 眠りにつくことにしよう。 せめて、起きても この豪華な天井を見て目が覚めますようにと それだけを、心にとどめて 目を閉じた。
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