最小不幸社会

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ある夕暮れ、鈴をちりんと鳴らして 犬のような姿をした人間、通称“ドーマン”が 血を足の裏から流しながら、裸足で裏通りを駆け抜けていた。 “捕まれば、死” 頭にあったことはそれだけであった。 人権など保障されていない、道具としての自分の命。 道具が主に逆らうなど、決してあってはならないこと… ただ、それでも 奴隷として生きることは嫌だった。 毎日1つずつ、一生残る傷を作って 泣くことも許されぬまま生きていく。 耐えられなかった。
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