初労働

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食べている途中に気づいたのだが この屋敷では、自分以外にドーマンは 召使として雇われるのはおろか、奴隷として飼われてもいないようだった。 召使としてドーマンを雇う人間など この世に皆無といっても良いくらいであるし ドーマンはどこの家にもいる奴隷と言う訳ではないので 特に不思議なことではない...のだが、 少し…さびしい。 人間が、自分と対等な立場で話してくれるはずが無いからだ。 つまり...話し相手がいない。 現に、自分の正面に座っている召使も こちらをちらちらと、やたら気にしながらご飯を食べているようである。 恐らく、どう接すればいいのかが分からないのであろう。 前の主の下でも、その前の主の下でも、その前でも、 自分以外に、奴隷としてドーマンは飼われていたので そのドーマンが自分の話し相手となってくれていたのだが ここでは喋ることのできる“仲間”がいない。 そう考えると、寂しいし、やはり、つらい。 そして、同時にさらに新たな疑問が芽生えてくる。 正面に座っている召使の反応と、他にドーマンがいないことから判断して、 自分は初めてこの屋敷に来たドーマンなのかもしれない。 そして、この世界で、奴隷として最も一般的なのはドーマンだ。 他にも奴隷として扱われる生き物として、人間もいるにはいるのだが、 それは敵対していた者を負かし、自分の傘下に収めた時に、奴隷として扱うような場合のみである。 だが滅多にないことだ。 そして、この大勢の人たちの中に、それにあたる人はいなさそうだ。 つまり、自分はこの屋敷で、 人間の中でもドーマンの中でも “初めて飼われた奴隷”という可能性がある。 ......もしや、ハマ様は 初めて奴隷を手にしたばかりに、 奴隷の扱い方が分かっていないのだろうか? 自分に対しての、奴隷に対しては異常とも言える寛大な扱い…。 まさか、ドーマンがこの世界で一般的にどういう扱いを受けているかを知らないわけではないだろうし… そして…もしそうだとしたら、 いずれ自分の扱われ方は、ハマ様が奴隷についての知識を身につける度に、 次第に世間一般の奴隷としての扱われ方に戻っていくんじゃないだろうか? …嫌な考えばかりが、頭に浮かぶ
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