初労働

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嫌な考えを打ち消すために、 パンを口に入れ、牛乳を飲んで急いで流した。 そして、一斉に言う御馳走様を待つことも無く、自分の部屋に戻る。 後は、呼び出しがあるまで待機だ。 言うなれば、自由時間。 好きなことをして待っていて良いわけだが、その肝心の好きなことが無いし、 どうすれば良いのか全く分からない。 …そういえば、自分の部屋の掃除はまだしていなかったと思い 呼び出しがあるまで掃除をしていることにした。 早速その為の準備を始めようと、掃除用具箱の前に立っていると 「また掃除か?」 聞きなれた声がした。 声に耳を反応させて振り返ると ハマ様が立っていた。 「あ…はい。 これが自分の仕事ですから…」 …どうもまだ目を合わせることができず 手に持った箒を見ながら返事をする。 「自分の部屋には、あまりおられないんですか? 良くここで会いますけど...。」 少し、気になっていたことを 思い切って聞いてみることにした。 この人なら答えてくれるだろうと思ったからだ。 「…まぁ、君のところだけじゃないけどね。 この屋敷の召使の部屋を渡り歩いてる。 することもあまり無いから。」 「なるほど…」 珍しい人だ。 召使とそんなにスキンシップを図ろうとする金持ちなんて、他には居ないだろう。 「まぁ、こんなことしてれば 周りからは奇人変人扱いになるが。」 一瞬心を読まれたのかと思い、びっくりした。
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