最小不幸社会

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「はい、そこまで」 パンパンと手を叩く音がして振り返ると 自分を死に導くであろう、“あの場所”の人間が、裏通りの入り口に立っていた。 それは、死神のようにしか思えなかった。 捕まるまいと前に向き直し走り出そうとすると、 通りの出口にもガタイの良い兵士のような人間が既に配置されていた。 視界の横には、高い壁が空へと伸びている。 それは、とうてい登ることの出来るものではない。 無論、彼らに捕まらずにこの通路を抜けることはなおさら不可能だろう。 つまり、向かうべき道など何処を見てもありはしない。 ここに…逃げ場はなかった。 絶望感、焦燥感、悲壮感…。 全身を血液とともにめぐっていく鳥肌や、吐き気。 何もかもが、自分にこれ以上がないことを示しているように思えた。 “ここで命は尽きる” 紛うこと無き確信が、その場の全員の心に芽生える。 「やっと捕まえた…けど、 わざわざ連れて帰ってお仕置きってのも、それはそれで面倒くさい… だったら今ここで処刑っていうのも なかなかイキな、選択だよね」 “元”主の貴族の男が 兵士のような男にそう言った。 「ふふ…では、そこの広場で 緊急公開処刑でもいたしましょうか?」 「いいね!それ、大賛成」 それを聞き、全身の毛が逆立つ思いだった。 どうにかして逃げようとしたその瞬間、彼はガタイの良い男に取り押さえられながら更にみぞおちを思いっきり殴られ、そのまま意識を底に持っていかれた。
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