最小不幸社会

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「皆様、大変長らくお待たせ致しました。 これより、人類の反逆者であるドーマン…奴隷番号9番の公開処刑を始めたいと思います。」 あの貴族の男の声で目を覚ますと、 自分の上に先程のガタイの良い男がのしかかり、身動きが取れない状態になっていた。 そしてその周りを、大衆が自分に対する蔑みの目を持ちながら取り囲んでいた。 広場には、処刑が知らされてからあまり時間が経っていないにも関わらず、 既にたくさんの人間が集まっていた。 彼らの目的はもちろん一つ “自分よりも社会的身分の低い、「奴隷」という立場の生物”の処刑を楽しむことである。 この世界において、ドーマンの価値など そこらにいるアリと同じレベルであった。 すべての生物は、自分の意思を持ち、行動できるはずであるにも関わらず ドーマンは人間によって、その命の価値を定められていたのであった。 そして、人間の都合… いや、都合ですらなく、ただの娯楽によって 今まさにその命のひとつが消されようとしている。 「では、処刑の方法ですが、 それは簡単。 この男が持っている刀で、このドーマンの首を切り落とすだけです。 もう彼は完全に取り押さえられており 身動き一つ出来ない状況です。 すべての準備は整っているのです。 ここに高らかに叫びましょう。 この世界で唯一無二の存在であるのは私たち人間であると! そして、その人間に逆らったこのドーマンには 死、あるのみだと!!」 処刑へのカウントダウンが始まる。 それは、この命の終わりを告げる数字。
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