最小不幸社会

5/7

209人が本棚に入れています
本棚に追加
/146ページ
「9!8!7!」 その数字は 今まで聞いた中で最も重い意味を持つものだった。 当たり前だ。主の言うことに逆らったのだから のうのうと生きていける訳が無い。 そうではあっても...理屈では分かっていても… 決して納得は出来なかった。 納得が出来ていたら、奴隷として暮らす日々が嫌になり 主の家を逃げ出したりなどしなかった。 だから、...納得できないまま僕は死ぬ もっと生きたいのに僕は死ぬ。 笑って話して泣いて喜んで食べて寝て歩いて呼吸を、したい。 でもそれが許されないから、僕はこの数字が数え終わる頃には存在しなくなっているんだ。 「4!3!2!」 フフと、なぜか笑みすらこぼれてくる。 同時に、かけらほどの見えない涙もこぼれてくる。 さようなら。不幸な僕の人生 「唯一無二の存在...ね。」 その声は、確かに聞こえた。
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

209人が本棚に入れています
本棚に追加