最小不幸社会

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次の瞬間、自分の体の上から重みが消えた。 一瞬、体から首が切り離されたせいだと思ったが、どうやらそうではない。 視界の端に、広場の奥に吹っ飛ばされていくあのガタイの良い男の姿が見えたからだ。 「なんだ…?」 貴族の男の頬に一つ汗が滴る。 そして彼と同様に、この場にいる誰もが今の状況を飲み込めていなかった。 「さぁて、誰でしょう」 妙におしゃれな格好をし 自分の体ほどの長さの鉄の棒を持ち、 その男は、立っていた。 「あんたは…ハマさん?」 貴族の男は、明らかに態度を豹変させ、 目の前にいる男に、畏怖の念を抱いた声でそう言った。 ハマと呼ばれたその男は 棒の先を貴族の男に向け 「そのドーマンはこっちで引き取らせてもらう」 確かに、そう言った。 「え?ですが…」 「ごちゃごちゃ言うなよ。」 彼の後ろから何人か、ドーマンのところへと駆け寄り、体を起こした。 「大丈夫か?あんた」 「あ…」 その男に話しかけられたが、 返す言葉が何も思い浮かばなかった。 「じゃ、行くぞ」
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