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「…さん」
「起きて下さい、咲月さん」
声が聴こえる。穏やかで、涼やかな声。その声の主を確認するべく、私は目を開いた。
「良かった。目が覚めたのですね」
目の前には柔和な笑みを浮かべた美青年が佇んでいた。その美麗さに見惚れていたが、先程の事故を思い出して慌てて飛び上がった。
「あ、あの子供は無事ですか!?」
「わ、落ち着いて下さい!あの少年なら無事ですよ」
「そ、そうですか。良かったぁ…!」
安心して力が抜ける。あそこまで体を張って無事じゃなかったら笑えない。思わずこぼれた笑みは、青年から発せられた言葉で凍りついた。
「ですが…貴女は命を落としてしまいました」
「え?」
…死んだ?
…私が?
「……そっか。私、轢かれて死んじゃったんだ」
呆然と呟き、うつむく。そうか。死んだから、なんの痛みも無かったのか。じゃあ、此処は…
「…此処は、死後の世界か何かですか?」
「少し違いますね。此処は天界…世界を管理する場です」
「世界の管理?なんで私がそんな所に…」
「僕がお呼びしたからですよ」
青年が微笑みながら言った。
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