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「おい、おっさん。その予定を取り消すにはどうすればいいんだ?」
「なに、簡単な事だ。…死ね。」
おっさんの最後の2文字に感情はなかった。
「…俺の命と引き換えか?」
俺はおっさんの言葉を理解し、返す。
「うむ、そうだ。」
おっさんは感心したようにうなづく。
その仕草がムカつくが、今はその時じゃない。
「いいぜ。俺の命で弟が助かるなら安いもんだ。」
俺は言い放った。
それを聞いておっさんは意外そうにしている。
「理由を問おう。」
「俺の弟は天才プログラマーだ。将来、多くの人の人生を変えていくことになると思ってる。だからな、こんな喧嘩にあけくれてる腐った俺なんかの命で助かるなら安いもんだ。」
まだ若いが、弟はそんな奴になると俺は確信している。
おっさんは俯いてる。
俺の答えが吉と出るか凶と出るか。
「……はっ、はっはっはっは。久しぶりに芯の通った男を見た。よかろう、弟―白井仁は救ってやろう。」
俯いてるのは笑いを我慢していたのか、高笑いをし始めた。
はぁー。
全身から力が抜けた。
なんだ、こいつ…人が真剣に言ってるのに。
まぁ、弟の命が助かるんならいいか。
そう思うと俺の顔も少しニヤけてしまう。
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