1104人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
日本人特有の、しかし、いまどきの若者にしては珍しい黒髪。
まるで獅子に睨まれたかのように錯覚させる両目。
その細身からは想像できない腕力。
優雅に、そして堂々と動く長い手足。
背中には真っ黒の楽器ケース。
あいつは強い、あいつとはやるべきじゃない、と。
旦那は俺に伝えた。
だが、俺には…いや、俺たちには旦那が負けるなんて信じられなかった。
噂で聞いた特徴をもとにあいつを見つけた。幸いすぐ見つけられたのだ。
旦那の恨みを晴らすはずだった。
そう”だった”のだ。
しかし……なんだ、こいつは。
本当に人間か。
俺たち8人を無傷で、屈服させた。
「……うぁ…。」
情けないことにこんな言葉しか出せなかった。
「ん?なんだ、まだ意識があったのか。」
あいつの声が聞こえる。
距離は分からない。
頭をあげれば、そこにはあいつの顔があるのだろうか。
それとも手の届かない距離にいるのだろうか。
動かせない体を憎み、そんなことを考える。
「この先、お前らが俺に喧嘩売ってきても別にかまわねぇ。そんときのお前らの拳に意志が詰まってんなら、本気になってやるよ。」
最初のコメントを投稿しよう!