Prologue

5/12
前へ
/13ページ
次へ
今日は久々の大学だ。 大学で学ぶことはあまりないが、たまには行かないと単位がとれない。 本当に、めんどくせぇ。 だが、今日は所属サークル―オーケストラの活動日だ。 こいつだけが今の楽しみ、だな。 幼いころから母に弦楽器―主にバイオリンを教えられ、今となってはもう俺の体の一部みたいなもんになってる。 今日弾く曲を頭の中で思い描く。 ベートーヴェン作曲エグモント序曲。 力強いG線から始まる曲だ。 頭の中で曲が流れると同時に右手が少しずつリズムにのって動く。 ――――――。 2分くらい歩いたときだろうか。 目の前の空間が歪む。 そして、”裂けた” 「…は?」 驚きのあまり間抜けな声が出ちまった。 それもそのはず、文字通り”裂けた”のだ。 中は真っ暗だった。 ふと、中から声が聞こえた。 “お前の魂いただいた” そう聞こえた気がした。 聞こえた次の瞬間、俺の意識は途絶えた。 「…っ…。」 意識が回復し、ゆっくりと目をあける。 「…は?」 本日2度目の驚愕。 横たわっている俺の目線の先には視界いっぱいの青空。 少なくとも、俺の近所じゃこんな場所はない。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1104人が本棚に入れています
本棚に追加