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今日は久々の大学だ。
大学で学ぶことはあまりないが、たまには行かないと単位がとれない。
本当に、めんどくせぇ。
だが、今日は所属サークル―オーケストラの活動日だ。
こいつだけが今の楽しみ、だな。
幼いころから母に弦楽器―主にバイオリンを教えられ、今となってはもう俺の体の一部みたいなもんになってる。
今日弾く曲を頭の中で思い描く。
ベートーヴェン作曲エグモント序曲。
力強いG線から始まる曲だ。
頭の中で曲が流れると同時に右手が少しずつリズムにのって動く。
――――――。
2分くらい歩いたときだろうか。
目の前の空間が歪む。
そして、”裂けた”
「…は?」
驚きのあまり間抜けな声が出ちまった。
それもそのはず、文字通り”裂けた”のだ。
中は真っ暗だった。
ふと、中から声が聞こえた。
“お前の魂いただいた”
そう聞こえた気がした。
聞こえた次の瞬間、俺の意識は途絶えた。
「…っ…。」
意識が回復し、ゆっくりと目をあける。
「…は?」
本日2度目の驚愕。
横たわっている俺の目線の先には視界いっぱいの青空。
少なくとも、俺の近所じゃこんな場所はない。
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