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効き目がないと分かっていても、少し挑戦的な態度で睨みを利かせてみる。
意外な事に、おっさんは真面目な表情になった。
「そうだな。君の魂を元に戻そう。もちろん記憶を消してな。そして…白井仁の魂を刈り取る。」
その台詞に俺の顔も真面目になる。
これはひょっとしたら…重いぞ。
「魂を刈り取る、ねぇ…。まるで死神だな。それで、魂を刈られた者の行きつく先は”死”か?」
じっくりと、相手を見定めるように目の前の相手の輪郭を目でなぞる。
「うむ、死神か。あながちはずれでもないな。そう、白井仁は死ぬ予定だ。」
パンッ
肉と肉がぶつかり合う音が響く。
俺の拳はあと少しのところでおっさんの手のひらに阻まれていた。
「ふざけんな、おっさん。あいつは俺の弟だ。弟が死ぬってんのに黙ってられっか。」
明確な意志を持って、おっさんを睨む。
「焦るな若造。志を持ってしても、短気は身を滅ぼすぞ。」
「…ちっ」
俺は不機嫌なまま、イスに座る。
この俺の拳が阻まれた。いつぶりだろうか。
いらいらしたいところだが、そうも言ってられない。落ちつけ俺。
「…すー…はぁ……!」
冷静になった所で、俺は気付いた。
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