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「おまん、こんな所におったのか…。」
ワシは思わず安堵のため息を零す。
が、**は気まずそうにギュッと身体を縮こませていた。
『ニャー!!』
「あ!!!」
ひょこっと**の胸元から白い子猫が顔を覗かせた。
**は慌ててその子猫を手で隠した。
「その子猫はどうしたんじゃ?」
「…ッ。」
**は俯いて黙り込む。
ワシは隣に腰を下ろして、
「捨て猫…か?」
と、問うと**は無言のままコクリと頷いた。
「…**。」
ワシは**の頭にそっと触れる。
「…っ!ごめんなさい!!わかってるんです、私ここにお世話になってる身で、猫を拾っても飼ってあげれないって…わかって……わかってるのに…ッ!!!」
**の瞳から大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちる。
「この子猫、親猫て逸れちゃったみたいで…1匹ぼっちで、寂しそうに鳴いてて……ッ。」
ワシは**に触れる手で、ポンポンと優しくその頭を撫でる。
「…自分と、重ね合わせてしまったんじゃな…。」
涙をいっぱい溜めた瞳で**はワシの顔をじっと見ると、
「はい…………ッ。」
と、頷いて顔を伏せてしまった。
声を殺して泣く**の姿…。
こん娘のこんな姿を見たのは初めてぜよ…。
いつも皆の前では明るくはちきんで、なんと強い女子じゃと思っちょったが…。
見知らぬ場所へ突然やって来て、不安にならんモンが居るわけない…。
こん娘がどれだけの想いをずっとその小さい身体に溜め込んでいたのか…。
その涙がワシに教えてくれた。
こんなにも追い詰められていたのに、気づいてやれんかった己に腹が立つ…。
暫く考えてワシは口を開いた。
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