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家具や段ボールが手際よく次々とトラックに積み込まれていく。
最後の段ボールを積み込むと、一足先に荷物だけが東京へと向かって行った。
空っぽになった自分の部屋を後にして、わしはある場所へと向かった。
―京都東山・霊山護国神社―
沢山の同志が眠るこの場所。
ここへ来ると、皆で駆け抜けたあの時代が懐かしく思う。
高杉さん…
桂さん……
そして大久保さん…
武市さんに以蔵……
そして………
「何度来ても自分の墓参りというのは、何とも不思議な感じぜよ。」
並び合う墓を見て思わずわしは呟いてしまう。
………中岡。
「背のちっさいおまんにはこれが一番の差し入れじゃき、にしし♪」
線香の煙が立ち上る中岡の墓に、供え物にと小魚がいっぱい詰まった袋をカサッと置いて、わしは話しかける。
「中岡…わしは今日、京を立つぜよ。**とまた出逢う為に…。
暫くはもうここに来れんくなるき…。
でも必ずまた帰って来るき、**を連れて…必ず二人で………。」
わしはそう伝えるとすっと立ち上がり、麓に広がる京都の街を見下ろした。
幕末の頃とは全く変わってしまった京の姿。
土の道はアスファルに変わり、車や電車が行き来する。
でも、この時代の京の街並みもわしは嫌いではない。
今と過去が調和したこの街並みは平成を生きるわしも、幕末のわしも全てを受け入れてくれるから。
「…この景色も暫く見納めちや……。」
名残惜しさを残しながらも、わしは東山を出て京都駅へと急いだ。
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