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ドラゴンの咆哮は耳をふさいでも頭が割れるような音で、気絶しそうなくらいだ。フルヘルムで覆われているグラーダの耳にもそれは届いてはいるが、それを振り払うほどの強靭な精神力をもっている。果敢にドラゴンへの一撃を振るう。
「いやぁぁぁあ!!」
縦に振り落としたその大剣は、鞭のようにしなるドラゴンの尻尾を強打する…しかし…
ガキィィィンと、大きな金属音をたてグラーダの剣は弾かれる。反動で大きな隙が生じる。ドラゴンはその隙をつきグラーダに向けて火球を放とうとする。
「あぶねぇ グラ!」
危険を察知し、リューの矢が放たれる。矢はドラゴンの左目に刺さり、ドラゴンは悲鳴をあげ、怯む。我を忘れ、辺りの建物に頭や翼をぶつけている。
「すまない…リュー」
「大丈夫か、それにしても…お前の一撃が弾かれるほどの硬さ…。並じゃないな。」
「そうだな…一先ず罠を張って追い込もう。あとは、ミラを待って…」
二人が作戦を確認しあっていたその時、燃え盛る建物の中から、子供の泣き声が聞こえた。残っているとは思われていたその中からだ。
「リュー。お前はドラゴンが体勢を整える前に罠を張っておけ。俺は向こうに行ってみる。」
「分かった。気をつけろよ…あの炎の中だ、火傷じゃすまんぞ?」
「俺が火傷を負うだけで人一人救えるなら、安いものだ。」
グラーダは声のする方へと走り出す。リューもドラゴンがまだ暴れている中、動きを封じる為の罠を仕掛けている。
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