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「おーい!誰かいるか!返事をしろ!」
駆けつけたグラーダには、まだ泣き声しか聞こえない。そんな中一軒の家からはっきりと泣き声が聞こえた。
木のドアをけり破り、家の中に入るグラーダ。そして、その中には1人の倒れた老人と、1人の泣き崩れている少女がいた。
「大丈夫か! …なんだ…何を言いたい?」
倒れている老人に駆け寄るグラーダ。しかし、その老人の容態は既に手の施しようの無い程、焼け爛れていた。そして、最期の力を振り絞り、グラーダに話しかける。
「あ…あノ…箱と…この子を…たの…む…。全…てを…集め、箱開く時…うぅ。」
「おじーちゃん!!おじぃいちゃん!!」
程無く、老人は動かなくなる。それをただ泣き叫んでいる少女。その少女の上に朽ちた柱が落下してくる。
「危ない!!」
とっさに、少女をかばう。少女は覆いかぶさるその大きな体に驚き、泣くことをやめる。少女は正気を取り戻し、グラーダを見上げる。「く…大丈夫か…?お前、立てるな?」
少女はコクンと頷き、立ち上がる。
「箱を…持ってくれ。ここの爺さんに言われた箱を。ちょっと今の俺は…持てるだけの余裕が無い…。」
少女は驚愕した。落ちてきた柱は、グラーダの腕に深く刺さっていた。出血も激しく、重症を負っていた。それを見て、また泣きそうになる少女に、グラーダが一喝する。
「泣くな。お前は、この爺さんのかわりにやらなくてはならないことがあるはずだろ。走るんだ!ここももう持たない!」
少女ははっとなり、箱を手に取る。そして、グラーダと共に外へと出る。そう…少女にとって、長く険しい、旅立ちへの入り口であった。
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