開かれる力

4/5
前へ
/10ページ
次へ
『最愛なるお父様へ、これはユリの10歳の誕生日の為に用意した、プレゼント…と言えれば良かったのでしょうが、おそらくこの手紙を読んでいる時は、既に私はこの世にはいないことでしょう。故にこの指輪の意味を包み隠さず、あなた様にお教えします。この指輪は、魔力を抑制する力のある特殊な宝珠を用い、加工した指輪です。おそらくユリは10歳を過ぎた頃より、強大な魔力に翻弄される事でしょう。  私の魔力を色濃く受け継いだユリは、まだその幼さゆえ力をコントロールできず、力は暴走し、最悪の果ては街をも滅ぼす力になりえません。それは彼女の意思に逆らい、ただ放出する力です。しかしこの指輪を用いても、ただ押さえ込むに過ぎません。この元を断たなければなりません。  まずは東の地にいる、魔術師ミラにその聡明な知恵を授かりに行ってはもらえませんか。』 と、手紙はこれで終わっていた。 「…尻切れトンボね。おそらく手紙はもう一枚あったはずね…。しかし、私に知恵を借りてくれって…ユリ…あなたのお母さんって。」 「…私の母は、母は…」 ユリは手紙に二、三粒の涙こぼし、その手紙の文字が滲む。 と、次の瞬間、ユリの胸の奥で小さな鼓動を感じた。その奥底から湧き出るものは…恐怖…邪悪なる想い…、そして…。 ユリから、指輪が転がり落ちる。ユリは膝を折り、手を床に着き何かに怯えるように震える。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加