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『最愛なるお父様へ、これはユリの10歳の誕生日の為に用意した、プレゼント…と言えれば良かったのでしょうが、おそらくこの手紙を読んでいる時は、既に私はこの世にはいないことでしょう。故にこの指輪の意味を包み隠さず、あなた様にお教えします。この指輪は、魔力を抑制する力のある特殊な宝珠を用い、加工した指輪です。おそらくユリは10歳を過ぎた頃より、強大な魔力に翻弄される事でしょう。
私の魔力を色濃く受け継いだユリは、まだその幼さゆえ力をコントロールできず、力は暴走し、最悪の果ては街をも滅ぼす力になりえません。それは彼女の意思に逆らい、ただ放出する力です。しかしこの指輪を用いても、ただ押さえ込むに過ぎません。この元を断たなければなりません。
まずは東の地にいる、魔術師ミラにその聡明な知恵を授かりに行ってはもらえませんか。』
と、手紙はこれで終わっていた。
「…尻切れトンボね。おそらく手紙はもう一枚あったはずね…。しかし、私に知恵を借りてくれって…ユリ…あなたのお母さんって。」
「…私の母は、母は…」
ユリは手紙に二、三粒の涙こぼし、その手紙の文字が滲む。
と、次の瞬間、ユリの胸の奥で小さな鼓動を感じた。その奥底から湧き出るものは…恐怖…邪悪なる想い…、そして…。
ユリから、指輪が転がり落ちる。ユリは膝を折り、手を床に着き何かに怯えるように震える。
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