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「才加ん家いきたい」
突然電話がかかってきて、何の用かと尋ねてみたら、一言だけ、そう言われた。
でも生憎、私の仕事はまだ終わってなくて、今もラジオの収録へと向かうタクシーの中だった。
こんな事もあろうかと渡しておいたいつしかの合鍵。
「いいけど、まだ仕事だから部屋入って待ってて」
そう言ってみれば、携帯電話のむこうから、わかった、っなんて可愛い声が聴こえてきた。
それと同時に、電話の向こうで頷く彼女の姿も容易に想像できて、思わず顔が綻んだ。
でもそれは、ちょっと前の話。
思ったより仕事は長引いてしまい、柄にもなく慌てて家路についた。
もう寝てしまっているんだろうな、なんて考えながら開けた自分の家の扉。
すると、予想外にも目に入ってきたのはまだ消されていない電機と、いかにも不機嫌オーラを醸し出している彼女の姿だった。
「おーそーい」
「ごめんごめん」
「友、待ちくたびれた」
プクッと。
膨らまされた頬。
機嫌が悪いとゆう事を見せたいんだろうが、私にとっては可愛らしいだけだ。
でも、私のベッドにちょこんと座っているともちんは、本当に不機嫌らしい。
でも、いきなり家に行きたいなんて言い出したのはともちんじゃんか。
思わず出そうになったそんな言葉をグッと飲み込む。
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