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茹だった頭のマリオンはさらにヒートアップし、とうとうスパナを振り上げた。
それはもう、芸術の域に達した角度であった。と、直撃と同時にマリオンの怒声が悲鳴に変わる。
「ああっ!? ごめんごめん今の嘘!?」
「向こうについたら世界一のオイルもお腹一杯ご馳走するし、イイ整備士(おとこ)も紹介するわ!」
「あんたは最高の相棒よ! だから今だけは機嫌直して、ねっ!?ねっ!?」
何を今更。へそを曲げたマリオンの相棒ことホバーバイク、BLD-205型はそっぽ向いたように黒煙を吹き上げる。
「あぁあぁぁ一一もおおおうッ!」
マリオンの絶叫が、広い大洋に虚しく響く。大砂海の真ん中で、マリオンの声を聞き届ける人間はいない。
一一そう、人間は。ダーエーナ大砂海が砂漠でありながら海に分類される理由。それは、極細の砂の海を泳ぎ回る怪魚の存在である。
ダーエーナ大砂海の底の底。わずかながら確かに流れる地下水脈から砂漠に適応した魚類達は、大半が砂の中の微生物やミネラルを栄養にする小型種と小型種を捕食する中型種が大半を占めていた。
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