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闇に閉ざされた空間に1つ炎が灯った。
ライターである。
ゆらゆら、ゆらゆらと揺れる灯りは不明瞭で、それを持つ人物の顔すら満足に照らし出せていない。
「おうおうおう。こりゃ酷ェなアレックス」
炎が揺れた。無精髭の男の顔が見えた。ライターの炎でくわえた煙草に火をつける。纏う茶色のコートから突き出た長い刀がやけに特徴的だった。
「ええ、カザハラさん。採掘作業中の落盤事故みたいですね。全く、何だってこんな場所に」
また揺れた。男の2、3歩先を少女が歩く。
オーバーオールにガンベルトを巻き付けた少女は注意深く辺りを探っていた。
男の方はカザハラ、少女の方はアレックスと言うらしい。彼らは大きく息を吸い込み、声を大にして叫ぶ。
「「もしもーしッ!誰か生きてらっしゃる方一一!!」」
が、洞窟の中に虚しく声が反響するのみでそれ以外の物音1つしない。
「……返事、ねェな」
「ねェですね。では今すぐ回れ右しましょうッ!」
「薄情かッ!もう少しくらい探そうや」
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