第一章:少年とは

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「……つけられているな」 車が走り出してから少しして、俺は運転席の彼に聞こえるようにそう呟く。 顔は前を向いたまま。 後ろを振り返ろうとはしない。 「……やはりか。後ろの赤い奴か?」 視線だけを動かしてフロントミラーに写る真紅の車を見て、男はそう俺に尋ねた。 「いや。それはただのダミー」 「は?」 「勿論、そいつも振り切る必要があるが、目下のところそれは無視でいい」 腰から拳銃を二丁取り出し、俺は言う。 「この街中で発砲する気か?」 「どうせ捨てる車だろう。それとも、ここで死ぬか?」 「いや――。でもわざわざ撃たずとも振り切りさえすれば――」 「この状況で振り切るなんて概念は――、ない」 その言葉と同時に。 俺は左右のウィンドウを開くと、そのまま外へ向かって発砲した。 サイレンサーは当然つけている。だが、それでも目立たないわけじゃない。 「お、おい!どこに向かって撃っている!?」 「お前は運転に集中しろ」 俺が撃ち抜いたのは車道の両側に停めてあった二台の車。 「次」 そして今度は6階建てマンションの3階のベランダに向けて、銃弾を放つ。 そこに立っていた一人の男が、それを受けて倒れた。 「ま、まさか……ッ!?」 「ああ。既に行く先全てで待ち伏せされているぞ」 後ろを走っていた赤い車の後部座席の窓から、半身だけだした男が此方に銃口を向けた。 痺れを切らしたか。待ち伏せがばれて強行手段に出たな。
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