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「なんで待ち伏せされていると分かった!?」
「別に。俺は目がいいからな。銃を構えているのが見えただけだ」
「で、デタラメな――!」
嘘は言っていない。
戦いにおいて、目は良いに越したことは無い。
だから俺はナンバーズになる過程で、人間よりも高い視力を得た。
だが、それだけでは駄目だ。
人間は『見えるだけでは気づかない』。
『そこに意識を向けなければ、気づけない』のだ。
何十キロと言う速度を出している車の中、外の景色全てを把握すると言うことは、外にある全てに意識を向けると言うことは、『人間では不可能』だ。
だから男はデタラメと評した。
ただ目がいいだけでは気づけない。
ただ周りを眺めているだけでは気づかない。
ましてや、停まっている車の中の様子や、建物の3階にいる人間の動きまでは――。
「成る程。確かに『化け物』だな」
男は少し冷静さを取り戻したのか、先程より幾分か安定した運転をしながらそう呟いた。
「ああ。少なくとも、人間じゃない」
そして俺は前を向いたまま、後方の車に向けて銃弾を放つ。
弾はそのまま赤い車のフロントガラスを突き破り、運転席の女性の眉間を撃ち抜いた。
そしてもう一発。
銃を構えていた男の眉間を撃ち抜くと、俺は銃をしまった。
「とりあえずはこれで問題ない」
「……期待以上だな。ナンバーズ」
「それはどうも」
俺は心の篭っていない声で礼を言った。
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