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「よし、これで全部だな」
深夜。とある港の、とある倉庫。
8人の成人男性が厳重にロックされた鉄の箱を、そこから外へ運び出していた。
数は10。その中身は誰も知らない。
この8人を取り仕切る一人の男性――、名を倉石 哲哉と言うのだが――、彼がある人物に1000万と言う金額で、これらを外国へ運搬して欲しいと依頼されたのだ。
それなりに危険を伴う仕事だというのは、その金額から予想できたが、しかし目先の大金に目が眩み、彼はそれを了承した。
箱を開けることは出来ない。男たちはそのロックを外す手段を持ちえていないからだ。
また、彼に持ちえていたとしても、これを決して開けるなと言われている為、開けるつもりは無かった。
ただでさえ、1000万と言う金額を目の前にぶら下げられているのだ。好奇心で無駄なリスクを負おうとは彼は思わなかったのだ。
「さて、船は用意してある。さっさと運び込むぞ」
携帯のディスプレイが照らす明かりだけが頼りの薄暗がりの中、倉石は仲間たちに言った。
皆が各々に頷く。
ここから船がつけてある場所まで30メートルほど。
この重い箱は、一つにつき二人がかりで持つ必要があるので、大体3往復あれば済むだろう。
時間にして5分もかからない。
今のところ俺達以外に人の気配は無いし、問題なく出発できそうだ、と。
倉石はそう思っていた。
そして、それが倉石 哲哉が最期に思ったことでもあった。
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