序章:存在せぬ者

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「!!」 鳴り響く銃声。眉間を撃たれ、ドサリとその場に倒れる倉石。 残った7人の男は驚きと恐怖で、慌てて周囲を見渡す。 暗闇の中。彼ら以外人の姿は見当たらない。 どこから発砲されたのかも、戦闘においてまるで素人の彼らには見当も付かなかった。 ――再び銃声。 今度は二発。 二人の男が、それぞれ急所を貫かれ絶命する。 今度こそ男たちは自身の死を意識した。 ここにいれば殺される。 そう察した彼らは、箱を置いてその場から散り散りに逃げ出した。 「……逃げたか」 そして誰もいなくなった10の箱の前には、一人の青年が立っていた。 年齢は20に満たないくらいだろうか。少年と言ってもいいかもしれない。 だがその顔立ちは、同年代のそれらとはまるで異なっていて、ひどく大人びて、また喜怒哀楽と言った感情が欠けているように見えた。 ――全くの無表情だったのだ。 彼はおもむろに、履いていたジーパンのポケットから黒い携帯を取り出すと、それを耳に当てる。 光の無い闇の中、彼は口を開いた。 「片付きました。後はこの箱を海に沈めるだけです」 ――何故、逃がした。 「殺す必要が、ありませんでしたので」 ――あるとも。関わったものは何であれ、その口を閉ざせ。死人ならば、開く口を持たぬ。 「……」 ――最後まで、残りなく、片付けろ。仕事とは、そう言うものだ。 「――了解」 携帯をしまうと、彼は腰にさしていた拳銃を片手に持つ。 その表情は一変し、口元が醜く歪んでいた。 つまり。 ――彼は、笑っていた。
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