第一章:少年とは

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「No.24。間もなく仕事の時間だ」 そう。そして名の無い俺は数字で呼ばれる。 24番目。ただそれだけの意味しか持たない言葉で。 『ナンバーズ』。 『組織』がその手で作り上げた、『組織』に従う忠実な僕。 名前、友人、家族、生きる意味。 それら全てを失った者たちに、『組織』の為に必要なことだけを詰め込むことで作り上げた、人とは呼べない異端たち。 その24番目としての、俺。 『組織』しか知らず、それ以外を持たない俺たちは、強制でも何でもなく、『組織』に従うしか術を知らぬのだ。 「わかっています。既に準備は整っています」 「……心してかかれ」 「ご忠告、有難うございます。それでは、後ほど」 黒い携帯を再びポケットにしまう。 電話の相手は俺の直属の上司。名前は知らない。知る必要がないからだろう。 『組織』にとって、唯の道具である俺たちには、『組織』の情報は何一つ与えられていない。 与える必要がないからだ。 手足に方程式を教える必要はない。 方程式を知っていればいいのは脳だけで、手足はそれを紙に書き記す作業だけしていればいい。 ――そう、それが俺だ。 どこからどう見ても、ただの一人の少年であるはずの、俺の在り方。 俺は、人間としての人格を、全く認められていないのだ。 そして俺自身も、俺が人間だなんて思っていない。 手足はただ、動くのみ。 道具はただ、使われるのみ。 そう、それでいい。 どうせ何かを考えるだけ、無駄なのだから。 中身の無い俺には、全てが無感動で、無価値なのだから。
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