第一章:頭痛。

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母親が退院の用意を順序良く進め、私たち三人はタクシーに乗って帰った。 私は結構眠っていたらしい。 だってもう、昼過ぎなのだ。 「にしても、何で倒れたの姉ちゃん」 「分かんない。急に酷い頭痛が襲ってきて……」 「襲ってきて?」 首を傾げて聞いてきた弟に、私は言おうか迷った。 私に向かって聞いたこともない、"誰か"の声を聞いたことを。 「襲ってきて、それで倒れたんだと思う」 「ふーん。朝飯食えば違うかったのかもね、お母さん!」 にっこり笑って言った弟に、母親も同じような笑顔で返した。 そうね、とでも言うように。 .
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