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あの声は、何だったんだろう。
誰、なのか。
家に帰ってきて、ただあの声の主を考える。
布団の上に身体を投げて、脱力していた。
「あの声、懐かしい声だった……」
ボソリと呟いた言葉を理解して、思わず飛び起きる。
懐かしいって、何!?
聞いたことない声のはずなのに!
「自分、どうしたのさ!」
一人でただ言っただけなのに、恥ずかしくなって声を上げる。
両頬を両手でパシッと大きく叩いて、痛みで正気を保つ。
「本当に誰なんだろう。私のこと蘭花じゃなく、蘭って呼んでたし」
ふうっと息を吐いて、もう一度布団に身体を寝かせる。
ふわふわと暖かい布団が心地よくて、眠気を誘った。
睡魔に任せ、私が眠ろうとした時、また声を聞いた気がした。
蘭、と呼ぶ切ない声が。
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