学園へ

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文明の利器の存在感を完全に忘れている僕は物凄く焦っていた。 こんな事態が起きることを想定して地図等を持ってくるべきだが、すっかり忘れてしまっていたのだ。 あれれぇ僕ってばうっかりだな~はははははー、とふざけた思考がよぎったがこんなことで事態は良くなるはずもなく切り替えることに… なんとかなるだろうという楽観的思考を信じ、探せばその内見つかる!と勘に頼って歩くこと数分、時計台を発見できた。 咲き誇っている桜を陽射しが照している。先ほどまでの景色と一変して、まるで別世界のようだ。 時計台に着き、達成感に浸っている僕に誰か話しかけてきた。 「どこ行ってたんだよ?寮から出て真っ直ぐ来たらすぐなはずだぞ」 新入生の印である桜の襟章を付けた、長身の少年が話しかけてきた。 取り敢えず時間には間に合ったのかな? 「…ああ、ごめんごめん、迷子に…じゃなくてビル街の方から来ちゃったから、はははは…」 おっと、いかんいかん迷子になったから遅れたとは言えない、この学生―雨宮勇人に説教される。 だが… 「迷子になったのか…まったく…地図ぐらい確り用意しとけよ お前のことだから地図を忘れたことも忘れてたんだろうけどさ」 呆れたように言われた。 ……やっぱ誤魔化せん、最後の方は心外だ、と思いつつ説教されなかったことにほっとする。 時間を書かなかったのは元々これを見越していたためらしく、 「計ったな!集合時間ぐらい書いとけよ」 とつっこんだが、 「なら電話しろよ」 の一言で敢えなく撃沈。 畜生電話に何故気づけなかった、と暫く自分を悔いたのは仕方ない事だろう。 そんなこんなで僕たちは学園へと歩みを進めた。
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