学園へ

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「やっぱり勇人はモテモテだね~、ホント羨ましいよ~」 いつものことなので、軽く意地悪を言ってやった。 勇人は苦笑いで 「…物珍しさで見られてるだけだろうが、お前に代わって欲しいよ…」とだけ返す。 哀愁漂うその姿に見かねて暫く励ましていると、漸くその姿に若々しさが戻ってきた。 勇人は疲れたように額に手を当てて、ため息をもらしている。 彼が気疲れしているのは彼の出生に起因している。 彼こと雨宮勇人は過去の大戦の英雄 雨月響助と天宮沙羅の孫なのだ。 今もまだ語り継がれる英雄達の衰えることの知らぬ人気の高さと、名前だけなら園児でさえも知っているほどの高い知名度がこのような事態を招いているわけなのである。 勇人の親御さんは名前が広まらないように頑張ったそうだが、阻止出来なかったようで今ではもうこんな感じで広まってしまったそうだが… ただ彼に向けられているのは好奇な視線だけではない。 めんどくさそうな顔色を浮かべる彼はさっぱり気づいていないようであるが、憧れや恋する乙女の眼差しである。 勇人は成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群、性格温厚で面倒見がよいのも起因しているのだろう。 知名度が初めから高い上にこれだからな……すぐに広まってもしかたなかろう。 彼にとって、向けられる視線によって感覚が鈍くなったせいで区別出来ないからどういう視線でも一緒だそうだ。 くっ、このモテモテ野郎が…と軽く毒づくが、このことは多くは語るまい、語るほうが虚しくなるからだ…
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