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―私は終わりを迎えられない
―過去に生きる、亡霊となった筈なのに
―仲間を失い、希望を失ってなお、未だ時の渦に縛られている。
―何故私が生かされたのだろうか?
空は重い雲を抱えているようで、木々の間からは弱く光が差している。
―答えの出ない自問自答は辞めよう。
私は樹の根本から重い腰を上げ、揺れる木の葉を見上げた。
木々の葉はざわざわと小さく揺れてざわめいている。
暫くして珍しく雨が降っていることに気付いた。
私は段々と強く降りだす雨の音に耳を傾けながら、ゆっくりと丘へと歩きだす。
足取りは僅かに重い。
丘にはいつかの日のまま、背丈ほどある石碑と黒色を直方体に切り出した様な物が鎮座してある。
丘にたどり着くと、一際冷たい風が吹いた。
―寂しいものだ
この孤独はいつまで続くのか。
一人の【世界】で、私は空を見上げた。
先ほどまで、どんよりと曇っていた雨空には大きな切れ間が出来ていて、丘に光が差し、大きな虹が架かっていた。
まるで橋のように。
私は【世界】の音色に胸騒ぎを感じずにはいられなかった。誰も居ないこの場所で小さく笑みを漏らし、丘を後にした。
解放の日は近い…と
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