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式は滞りなく進行し、思いの他すぐに終わってしまった。
各々のクラスに集まるまでの時間、レオは「手洗い行ってくるから先行ってて」と言い残し、勇人は「ちょっと用事が出来た」と言って離れていったため、竜と二人で先にクラスに向かうことにし、席を立つ。
まだ式場に残っている生徒も多く、式場の外では在校生達が部活勧誘に向けた準備をしている。
新入生が来た事で新しい風が入ってきたからだろうか、先生方や生徒達も新品の靴を卸した様な明るい雰囲気を纏っていて、話し掛けるのにはそう難しく無さそうだ。
席を立った僕らは指定されたクラスに向かいたいが、如何せん学園内をまだまだ理解しきれていないので、聞かないとならない。
この様子なら誰に聞いても良さそうだと判断した竜と僕は、近くで式場の片付けに取り掛かろうとしている先輩に話しかけた。
「すいません。1-Cに行きたいのですが、どのように行けば良いですか?」
無難に尋ねた僕だったが、その先輩が振り向いてすぐに驚きで声が出なくなった。
「お?」
そこで作業していたのは放送部部長達と大騒ぎしていた人物。
会長である夜火乱尾だったからだ。
「……」
僕は質問も出来ず閉口して冷や汗を流す。
先程は正に生徒会長と言ったような振る舞いだったが、なんせ放送室では恐ろしい一面も見せて下さっている人だ。
言葉を選んで発言しなければと、あわあわしている横から堂々とした態度で竜が口を開いく。
「夜火会長、1-Cに行きたいのですが、道を教えて下さいませんか?」
さ、さすが竜!下手に間を開けないことで相手をイライラさせない方が良いと即座に気がつくなんて…。
会長さんは特にこれといったリアクションを取るでもなく普通に丁寧に答えてくださったため、僕の心配は杞憂に終わった。
内心では、この親切そうな会長をキレさせるなんて放送部は日頃からどんなことをしてるんだろうと、同情の視線と共に少しウルッとなる。
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