3人が本棚に入れています
本棚に追加
「……君、悠君」
どこからか僕を呼ぶ声がする。
いつの間にか寝てしまっていたらしい。嫌な夢だった。
病院の待合室なんかで寝たからあんな夢を見てしまったのかもしれない。
そんなことを考えていると後ろから肩を叩かれた。
「ねぇ、悠君。聞こえてる?」
振り返ると白衣の天使がいた。
白衣の天使こと坂本彩さんは怒ったように頬を膨らませていた。
「聞こえてますよ」
「聞こえてたなら返事ぐらいしてよ。私だって暇なわけじゃないし、先生が呼んでるんだから」
彩さんはそう言うと僕の手をとって歩き出した。
僕は抵抗せずにただ引きずられていた。
そのまま、診察室へ引きずり込まれ椅子に座らせられた。先生は僕を見ると
「元気そうでなによりだ、もう大丈夫かね」
と問い掛けてきた。そのあとも暫くは診察が続いた。
診察が終わり、診察室から出ると彩さんが口を開いた。
「今日も舞夏ちゃんのところ行ってあげなよ。あんたがくるの楽しみにしてるんだから」
枝川舞夏は僕の妹だ。一年前、僕が本当に馬鹿だったせいで傷つけてしまい、それ以来入院、退院を繰り返している。
最初のコメントを投稿しよう!