ギブソンと赤いキャミソール

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「君は――」 「――何で話し掛けてきたのか? ……でしょ?」  俺は黙って頷く。  何だ、この女……読心術でも持っているのか? 杏哩は怪訝な顔をする俺を見て口を緩ませる。 「ただ、君に興味を持ったからよ。……君は誰も自分に興味が無いと思っているでしょ?」  その通りだから俺は何も言葉を返せない。けれど、杏哩の俺に興味を持っているという言葉もまだ信用していなかった。 「あと、私の事は杏哩でいいよ。……ねえ、歌ってよ」  演奏を遮って話し掛けてきたと思えば、今度は歌えと。何て自分勝手な女だ。  けれど、自分の歌を聴きたいと言われる事に嫌な気はしなかった俺は、再びギターを握り、杏哩に言われるがままに歌い始めた。  今度は黙って俺の歌に聴き入る杏哩。相変わらず雑踏していた駅前だったが、そんな風景は消え失せ、まるで二人だけしかいない世界のようだった――  弦を撫で下ろし曲を終えた時、杏哩は小さく拍手してくれた。同時に俺は杏哩に少しだけだが、心を許し始めていた。  この後の俺の行動は今思えば軽率だったと思う。俺は杏哩を、クラブで出会う名も知らない女と同じように扱ったのだ。……というか、女との関わり方は、俺はこの方法しか俺は知らない。
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