ギブソンと赤いキャミソール

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* * *  次の日の日が暮れた頃。俺は再び愛用のギブソンのアコギを片手に、錦糸町の駅前に来ていた。  昨日、杏哩が言った“またね”という言葉――明日また同じ時間、同じ場所で歌っていれば会えるんじゃないか――俺は心の中でそんな期待を抱いていたのだ。  こんなのは初めてだ。誰かに会える事を期待して訪れるなんて。弘剛にだって抱いた事は無い。  俺は昨日と同じように駅前の隅に座り込んで、ハードケースからギターを取り出す。まだ彼女の姿を見る事はできない。  取り敢えず、俺はいつものように演奏を始めた。選曲は何となく自然と昨日と同じ曲を選んでいた。 「今日も来たんだね。もしかして、私に会いに来たとか?」  俺は演奏する手を止めて、聞き覚えのある声の方に視線を移す。杏哩は俺を見つめながら微笑んでいるのが見えた。 「あれ、もしかして図星だったかな? フフッ。でも、私を落とすのは難しいわよ」  杏哩は笑いながら俺を茶化す。
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