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君は毎日この空を見つめて何を考えているんだろう――俺は射し込む日の光だけが照らす部屋のベッドに横たわりながら、窓越しに見える少女を見て思う。
白いワンピースに黒く長い髪。前髪は綺麗に揃えられている。顔も整った顔立ちで何かのアニメにでも登場しそうな不思議な雰囲気を放つ少女。
その少女はほぼ毎日狭そうに置かれたベンチから空をボーッと見つめている。俺の斜め上の階の部屋――707号室に住む君。
俺が知っているのはそれだけ。
名前も知らないし、なぜ、そうしているのかも俺は知らない。
まず、この狭いベランダに公園にあるような二人掛けの木のベンチを置こうと思った考えが理解できない。細く白い足が収まりきらず、柵の間から投げ出され、宙に揺れている。
そこから見える景色がそんなに好きなのだろうか。
それに、なぜ俺はこんなに君の事に興味を持っているのだろうか。
理解不能だ。色々と。
「壮平。長い間、ボーッとしてたよ? 考え事? どうせ他の女の事でも考えてたんでしょ?」
壮平は、俺――田中壮平(タナカ ソウヘイ)の事。そして声を掛けてきた俺の横に寝ているのは、昨日、クラブで出会った女。名前は……ええと何だっけ。覚えていない。
それくらい俺は興味が無いんだ、お前には。昨日の晩、俺の上で腰振っている時でさえな。
だけど、それ以上にお前は俺に興味が無いんだろ? 俺は知っている。
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