ギブソンと赤いキャミソール

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「意外に家近かったんだな。俺も同じ方向だ。途中まで一緒に帰るか?」  杏哩は「うん」と頷き、俺はギターを片手に歩き始めた。  居酒屋やデパートなどが建つ南口とは違って、北口は少し落ち着いた様子を見せる。俺の家はそんな北口から十分もかからないところにあった。 「私の家はもうちょっと先なの」 「結構、遠いんだな」  俺のマンションの入り口の前で立つ俺と杏哩。七階建てのマンションでオートロックの築浅のマンションだ。 「なかなか綺麗なところ住んでるんだね。壮平は何階に住んでるの?」 「六階だ。606。……どうだ? 少し寄っていかないか?」  俺は何と無しに誘ってみた。癖というやつか。ただ、二回も誘った女は杏哩が初めてかもしれない。  杏哩は少し考えた後、俺に言った。 「壮平とあいつは凄く似ているけど、一つ確実に違うところがある。……私は壮平をそんな風に見てないから」  俺は何か失敗したらしい。大体、それ以外で見ず知らずの男に付き纏う理由は何だ? 分からない。女心は分かったつもりでいたが、それは限られたものだったのか。
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