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次の日は朝から雨だった。
灰色の空とシトシトと降る雨は俺を少し寂しい気持ちにさせる。しかし、それは逆に心を落ち着かせるという事でもある。
こんな雨でも君は空の先を見ようとしている。灰色の奥を。
俺はベランダの窓から外を見上げる。少女はこんな日でもいつもの場所にいたのだ。ベランダから飛び出した足は濡れはしないのだろうか。そもそも今日はいつからあそこにいたのだろうか――俺はそんな事を考えながら、ボケっと部屋で過ごしていた。
今日は大学の授業も無い。目を覚ました俺は、冷蔵庫を開けて中を見渡した後、残り物を使って簡単な物を作り、腹ごしらえをした。
こういう日は特に何をする事も無く過ごす。強いて言えば、音楽を聴いたり、PCでネットサーフィンだ。こうして俺は今日も夕方まで時間を潰した。
雨だから当然ギターを弾きには出掛けない。クラブだけの為に、着替えて雨の中街へ繰り出す事もしない。だから、俺は今日は何をする事も無く一日が終わるものだと思っていた。
突然、無音の部屋に呼び出し音が響き渡る。オートロックのインターホンだ。
俺は勧誘か何かかと、徐にモニターを覗く。そこには見覚えのある女の姿が見えた――杏哩だった。
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