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「もしもーし?」
杏哩は俺が見てるかどうかも分からないカメラに向かって、明るく手を振っていた。俺は気だるそうにインターホンに出る。
「何の用だ……急に」
「あら。いつも誘うくせに素気なくない? ……まあ、いいわ。兎に角ここを開けてよ」
そう言いながら、杏哩は「早く早く!」と言わんばかりの素振りを見せた。俺は仕方なく理由も聞かずに、インターホンの横の解錠のボタンを押す。そして、杏哩はオートロックの扉が開くのを見ると、嬉しそうな笑顔をカメラに見せ、中へと入っていったところで映像が消えた。
急だ。しかも、昨日は拒んだはず。別に好きでもない男の部屋に突然来る理由は何だろうか。理解不能だ。
取り敢えず、俺は突然の来客という事で、部屋の散らかり具合を確認した。問題ない。というか、今から片付けようなどという気は全く起きなかったという方が正しい。
それから、オートロックを開いてから数分も経たない内だ。部屋のインターホンが鳴るのに気付いた。杏哩だろう。オートロックの扉からエレベーターはすぐ近くだし、部屋の前まで来るには大体これくらいだ。
俺は鍵の開けて、扉を開いた。そして、目線を少しだけ下げたところに杏哩はいた。杏哩は視線を合わせた後、「よっ!」と、右手を上げニコリと微笑んだ。
「どういうつもりだよ?」
俺は頭を掻きながら顔を扉から出して杏哩に問う。
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