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何となく気まずくなったのか、杏哩は体を伸ばしながら周りを見渡した。すると、何かに気付いたように、ベッドの上からピョンと降り、床の上に小さく屈んだ。
「どうかしたか?」
CDラックを見つめる杏哩は、一瞬だが怪訝な顔をしたような気がしたのだ。だが、俺が質問をするとそれは直ぐに消え去った。
「あ……いや、いっぱいあるなあと思って。メメントのCD。好きなの?」
聞かれた俺は一言、「ああ」と答えた。
「……私は嫌いだけどな」
杏哩が珍しく暗い表情で、小さく呟くのが聞こえたが、次の瞬間にはいつもの笑顔に戻っていた。
少しの間、CDラックの中身を見ていた杏哩だったが、飽きたのか、窓の方に向き直りながら立ち上がって伸びをする。
「――あっ!」
窓の外を見た杏哩は、突然声を上げたのだった。
外の斜め上を指差したままの杏哩。
「ねえ、見て見て!」
「ああ。いつも、ああなんだ。いつもああやって――」
俺はてっきり……正直、勘違いだった。俺の言葉が聞えていないかのように杏哩が遮る。
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