ギブソンと赤いキャミソール

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 俺の言葉に少し驚いた顔を見せたものの、黙ってコクリと頷く杏哩。  俺にとっても珍しい。目的も無く他人を繋ぎ止めるなんて。  大体、最初からそうだった。杏哩を他の女と同じように扱ったあの時だって、心の中では大した下心なんて無かったのだ。ただいつものように振舞っただけ。吸いたくもないタバコを、毎日の習慣で吸わなければならない義務感に駆られるようなものだ。  俺は眩しく差し込む夕日に、少しだけカーテンを閉めて、飯の支度をする為に台所に向かった。  冷蔵庫を覗く。玉子に、冷凍していたご飯、玉ねぎの残りに、レタス……。 「悪い、炒飯でいいか? そんなに大した物が残ってないんだ」  再び頷いて見せる杏哩。それを確認した俺は、包丁とまな板を用意し、台所に体を向けた。  俺が料理をしている間、杏哩は無言でベッドの上で足を抱えて座っていた。会話も無い部屋の中で、端切れの良いまな板を包丁で叩く音が響いていた。
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