ヴァニタスと二者択一

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「今日は凄いメンツが揃ってるんだぜ」  弘剛は楽しそうに俺に話す。確かにフライヤーに載っている名前は見た事のある名前ばかりだった。  それにしても、いつも誰に対しても失くさない弘剛の笑顔――これが、皆が弘剛に寄ってくる理由だろう。俺には到底できない事だ。    今日のイベントについてと最近の近況を少し話したところで、別の客が弘剛を呼ぶのが聞えた。 「ごめんな、また来るよ。楽しんでってくれ」  弘剛は忙しそうだ。立ち去ろうと一歩踏み出そうとしたところで弘剛が振り返る。 「あ、そうそう! あそこにいる髪の長い女だけは声かけるなよ。俺が狙っているんだ」  弘剛は俺の肩を持ち、俺の左奥の空間を右手で指を差した。その方向には、茶髪のロングヘアーの派手な女が友達と楽しそうに話しているのが見えた。  俺と弘剛が違うところがもう一つあった。それは女の趣味だ。絶対、俺が声をかけないタイプ――それが弘剛の趣味の女だ。それも弘剛と仲良くできている要因かもしれない。 「それじゃあな」  それだけ言うと弘剛は俺の元を立ち去った。俺の視界の向こうで、弘剛が複数の人と楽しそうに話をする姿が見えた。
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