池田屋事件

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    「池田屋が当たりだと、近藤さんたちが危ねぇ…」 たった十人で池田屋に向かった近藤さんたち。 いくら強い隊士を引き連れていても、人数が多ければこちらが不利になるかもしれない。 「源さん、隊士を率いて先に池田屋へ向かってくれるか」 「おや?歳くんはどうするのだい?」 「…俺はまだやることが残っていてな」 やること…? 「わかった。来るときはくれぐれも気を付けるのだよ」 そのまま井上さんは斎藤さん、原田さんと隊士を率いて走っていった。 私は土方さんに片時も離れるなと言われたため、一緒に残ることとなる。 やることってなんだろ… 土方さんは井上さんたちの後ろ姿を消えるまで見つめていた。 「あの、土方さん?」 「さて…あいつらも行ったことだし、教えてもらおうか」 「……え?」 土方さんは私の肩を軽く掴む。 それはまるで、私を逃げられないようにしているようだった。 「なんで、“やっぱり池田屋”だとわかった?」 「あ…」 それは私がさっき呟いた言葉。 聞こえないように呟いたつもりだったのに、聞こえてたんだ… 「長州の小娘とあった日から様子がおかしいとは思っていた。 橘…お前は俺たちのこと、どこまで知っているんだ?」 「それは…」 土方さんはもう、私が何故この先のことを知っているかなんてことは聞かない。 それは未来を知っていることを前提に投げ掛けられた言葉だった。 でも、 そんなの、私にもわからない。 手紙に書いてあった内容がこの先、どれほどの重要性があるかなんて私だって知らない。 もしかしたら紫織は新撰組にとて重要な未来をわざと書かなかったかもしれない。 嘘のことを書いているかもしれない。 書いてあったことが、本当に起こらないかもしれない。 どれも根拠のない未来だから、土方さんの問いに容易に答えられなかった。 .
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