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「オラァ!」
「ぐぉっ」
富田の腕が俺の顔面に届く寸前、何者かが思いっきり鉢植えを叩きつけた。富田は気を失ったようだ。間一髪だった。かすめた頬から血が流れる。
「大丈夫っすか桑田さん」
「さ、斎藤!なんでここに?」
「説明は後です。今は早く逃げましょう」
斎藤が俺をおぶる。いつもこいつの尻拭いばかりさせられていた俺がまさかこいつに頼る時が来るとは。ガテン系の仕事をしていたこともあると言っていただけあって、伸長差の面もあり軽々と背負われた。
「なにがどうなってるんだ?富田は・・・あのバケモノはいったいなんなんだ?」
「俺にもわかりません。たまたま俺は忘れ物を取りに来ただけですから。しっかし富田の野郎あんな裏があったなんて・・・・」
まだなにかあるという嫌な胸騒ぎは思いのほか外れ、会社を出て順調に駐車場までたどり着いた。そのまま警察に通報し何事もなかったかのように元の暖かい日常へ帰る、そのはずだった。ところが斎藤は急に足を止めた。
「どうした?」
「あ・・・あ・・・・・」
斎藤は茫然自失で立ち尽くしている。
前方を見てみると信じられないことに頭部から血を流す富田がいた。追って来る気配すら感じさせなかったはずなのに。やはり今宵が俺の命日なのか・・・・・。
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