形だけの無様な傀儡中間管理職!?――フッ俺を呼んだか。

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高く振り上げられた富田の右腕は変形前より華奢になったものの長く伸び、五本の内三本だけが異常に発達した鍵爪が部屋の照明と重なる。 俺は殺される。結末が見える。人生のあっけない終止符。このままずっと繰り返されると思ってた平凡な日常は終わる。富田の言う通り、痛みに苦しむこともなく断末魔の叫びをあげることもなく、一瞬で絶命させられることだろう。 「なにか言い残したことはあるか?一言二言の遺言なら受け取ってやる」 恐くて言葉が出ない。唇が震えているのだ。逃げるにも足は動かず、どうやら情けないことに失禁までしてしまっているようだ。 生き残る活路はまったく見い出せない。思考停止。もはや考えることは止めた。頭の中に浮かぶのは靖子と紗季の笑顔。残された僅かな時間は現世にお別れを、そして家族にお礼を言うために残されたようにすら思えた。もう死ぬのは時間の問題。それでもあわゆくば、――家族へのお礼を言いたい。そしてこれからも見守っていくからと安らかな表情で逝きたい。 「・・・あ・・ああ、ありがとう・・・・・・」 俺の人生は平均的な他人と比べて対して幸せといえるものではなかっただろう。いや、それどころか下だ。なんで自分ばかりだなんて惨めな思いもしたこともあった。それでも妻に、娘に、出会えて良かった。 「ふん」 俺の言葉に不満を感じた様子で富田はとうとう腕を降り下ろした。
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