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そう言って姿勢を正した彼は、では、と呟いて話を始めた。 「僕は朝起きて気付くと、何もない白い部屋にいた」 「どうしてそこにいるのか、どうやってそこまで来たのかは全く覚えていない。ただ、目を覚ましてみたら僕はそこにいた。しばらく呆然としながら状況を把握できないままでいたんだけど、急に天井のあたりから声が響いた。古いスピーカーだったんだろうね、ノイズがかった変な声だった。声はこう言った」 「『これから進む道は人生の道であり人間の業を歩む道。選択と苦悶と決断のみを与える。歩く道は多くしてひとつ、決して矛盾を歩むことなく』って。そして、そこで初めて気付いたんだけど僕の背中の側にはドアがあったんだ。横に赤いべったりした文字で『進め』って書いてあった」 「ドアを開けたら、右手にテレビ、左手に人が入った寝袋があった。テレビには、アフリカかなあ、飢餓に苦しむ子供たちの映像が写っていた。左手の寝袋は、誰かが入ってるんだろうけどジッパーがきっちり閉められてて、どんな人が入ってるのかは分からなかった」 「部屋の中に入った。すると真ん中あたりの床に紙切れが落ちてるのを見つけた。それにはこう書いてあった」 「『3つ与えます。ひとつ、右手のテレビを壊すこと。ふたつ、左手の人を殺すこと。みっつ、あなたが死ぬこと。ひとつめを選べば、出口に近付きます。あなたと左手の人は開放され、その代わり彼らは死にます。ふたつめを選べば、出口に近付きます。その代わり左手の人の道は終わりです。みっつめを選べば、左手の人は開放され、おめでとう、あなたの道は終わりです』」
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