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「次の部屋に入ると、今度は右手に地球儀があり、左手にはまた寝袋があった。僕は足早に紙切れを拾うと、そこにはこうあった」 「『3つ与えます。ひとつ、右手の地球儀を壊すこと。ふたつ、左手の寝袋を撃ち抜くこと。みっつ、あなたが死ぬこと。ひとつめを選べば、出口に近付きます。あなたと左手の人は開放され、その代わり世界のどこかに核が落ちます。ふたつめを選べば、出口に近付きます。その代わり左手の人の道は終わりです。みっつめを選べば、左手の人は開放され、おめでとう、あなたの道は終わりです』」 「思考や感情はもはや完全に麻痺していた。僕は半ば機械的に寝袋脇の拳銃を拾い撃鉄を起こすと、すぐさま人差し指に力を込めた。ぱん、と乾いた音がした。ぱん、ぱん、ぱん、ぱん、ぱん。リボルバー式の拳銃は6発で空になった。初めて扱った拳銃は、コンビニで買い物をするよりも手軽だったよ」 「ドアに向かうと、鍵は既に開いていた。何発目で寝袋が死んだのかは知りたくもなかった」 「最後の部屋は何もない部屋だった。思わず僕はえっ、と声を洩らしたけど、ここは出口なのかもしれないと思うと少し安堵した。やっと出られる。そう思ってね。すると再び頭の上から声が聞こえた」 「『最後の問い。3人の人間とそれを除いた全世界の人間、そして君。殺すとしたら、何を選ぶ』。僕は何も考えることなく、黙って今来た道を指差した。するとまた、頭の上から声がした」 「『おめでとう。君は矛盾なく道を選ぶことができた。人生とは選択の連続であり、匿名の幸福の裏には匿名の不幸があり、匿名の生のために匿名の死がある。ひとつの命は地球よりも重くない。君はそれを証明した。しかしそれは決して命の重さを否定することではない。最後に、ひとつひとつの命がどれだけ重いのかを感じてもらう。出口は開いた。おめでとう。おめでとう』」
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