幼馴染「……童貞、なの?」 男「 」

48/277
1364人が本棚に入れています
本棚に追加
/277ページ
 玄関を出て、二人肩を並べて歩く。まだ少し早い時間だが、あのまま家にいても落ち着かないだろう。  なんだかアンニュイな雰囲気。  歩きながら妹は、気のせいかと聞き逃しそうになるほど小さな声で謝った。  何を謝ることがあるんだと言ってやりたかったが、そんなことを言っても妹は喜ばないし、いつもの調子を取り戻さないだろう。  いいよ、と軽く答えた。なんとなく、自分の態度に苛立つ。何をえらそうにやってるんだ。おまえが家事をやれ。    なんだって、わざわざ家事を引き受けてくれている妹がダメージを食らうことがあるのか。  俺の態度が悪いのかも知れないな、とふと思った。  文句のひとつでも言ってやれば、「じゃあアンタがやればいいでしょ!」と逆ギレしてくれるかも知れない。  それはそれで、お互いストレスがたまりそうだ。  良い兄であろうとするのも考え物かも知れない。基本的にはダメ兄なわけだし。 「家事、手伝ってほしいときは言ってくれていいから」  一応、そう伝えておく。そっけなくならないように細心の注意を払って。  別におまえの仕事に不満があるわけじゃないぞ、と言外に想いを込めて。 「……うん」
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!