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後輩の顔を見るのは卒業以来だった。特に付き合いがあったわけではないけど、見かけたら話す程度の仲。
幼馴染を介して知り合ったのだが、仲が良くなってからはむしろ幼馴染より長い時間一緒にいたかもしれない。
別に暗いわけでも話していて退屈というわけでもない。親しい人間が少ないのは、耳につけたイヤホンをなかなか外さないから話しかけづらいのだろう。
それさえなければ友達なんて嫌というほどできるだろうに。
孤立しているというわけではないようで、それならまぁ、好き好きかとも思えるのだけど。
「妹ちゃんとお食事ですか」
「デートっス」
「デートっスか」
「違います」
妹があっさり否定する。あまりにも月並みなやりとりだ。
「ドリンクバーのクーポンあるけど。先輩使う?」
「いや、持ってるから」
ですよね。後輩はからから笑った。ポケットからイヤホンを取り出してつける準備をする。
「んじゃ、私行くんで。また。じゃあね、妹ちゃん」
後姿で妹の返事を受け取りながら、彼女はスタイリッシュに去っていった。「相変わらず、かっこいい先輩ですよね」
と、妹が言う。
「スタイリッシュなんだ」
「スタイリッシュ」
一瞬、妹は硬直した。これ以上ないというほど似合う言葉。あまりに似合いすぎるので、なんだか笑ってしまう。
「あいつ、趣味はベース」
「スタイリッシュだ」
笑いながら妹が何度も頷く。ベースを弾く後輩の姿を想像するとあまりに似合う。
「インディーズのロックバンドとか超好き」
「スタイリッシュ」
そもそもヘッドホンが似合う。肩までの短くてストレートな髪。整った顔立ち。それなのに少し小柄な体格。
可愛く見える容姿なのに、鋭い雰囲気を持っていて、クールともかっこいいとも微妙に違う、スタイリッシュな感じを作っている。
「洋楽とかめっちゃ聴く。邦楽も嫌いじゃない。というか、ちっちゃい頃じいちゃんに演歌やらされてたんだって」
「意外……」
「だから歌が上手い」
「へえ……」
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